母子家庭や離婚して再婚していないと、年末調整の時に税金が安くなる「寡婦控除(かふこうじょ)」が申告できる可能性があります。
- 実際の扶養控除申告書の書き方はどうするのか?
- 「特別の寡婦」って何?
- 「所得見積額」って何?どう計算するの?
- どういう条件なら寡婦控除を適用できる?
- 子供がバイトしてても寡婦控除OK?
など、意外と分からないことが多いですよね。
ここで寡婦控除にまつわる疑問点をしっかり確認しておきましょう。
年末調整で母子家庭・離婚で利用できる「寡婦控除」
母子家庭や、女性一人で親族を扶養しているなら、所得税を減らしますよというのが「寡婦控除(かふこうじょ)」です。
寡婦控除には条件によって「寡婦」と「特別の寡婦」に分かれ、特別の寡婦に該当するなら、控除額も大きくなります。
(男性の場合は「寡夫(かふ)」1種類になります。)
まずはご自身が寡婦なのか、特別の寡婦なのか?をチェックしましょう。
寡婦控除には3種類ある
寡婦控除とは、法律的にいうと
「あなたが寡婦に該当するなら、あなたの所得の一部に対して課税しません。」ということ。
で、寡婦には
- 寡婦
- 特別の寡婦
- 寡夫
の3種類があり、それぞれの条件や控除額が異なります。
特別の寡婦に当てはまる人は必ず寡婦にも当てはまりますが、特別の寡婦のほうが控除額が大きいので、「特別の寡婦」で申告しましょう。
それでは自分がどれに当てはまるのか、チェックしてくださいね。
「寡婦」の適用条件
寡婦に該当する人は、女性で以下の2つのどちらかに当てはまる人で、27万円の所得控除を受けられます。
かつ、
年間所得38万円以下(給与のみの場合年収103万円以下)の生計を1つにしている子がいるか、親族(親や兄弟)を扶養している。
(あなた本人の年収は問わない)
かつ、
自分は誰も扶養していない。
かつ、
自分は年間所得が500万円以下(給与のみ場合、年収6,888,889円以下)である。
お子さんがバイトをしていて、所得が38万円(年収103万円)を超えている場合は生計を一つにしているとは言えなくなり、NGです。
子供と暮らしているけど、元夫の養育費がしっかり定期的に入り、実質的にはその養育費で子供を扶養しているのであれば、NGです。
(元夫が自分の年末調整でその子の分の扶養控除をする可能性もありますので、心配な場合は話し合っておいたほうが良いでしょう。)
子供でなくても、所得38万円以下の両親など「親族」を養っている場合も適用できます。
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原因が「離婚」の場合は、たとえあなたの所得が500万円以下であっても、誰かを1人でも養っていないと寡婦には該当しません。
逆に言えば、お子さんがいないまま離婚しても、実家に戻って収入のない親を扶養しているのであればOKということ。
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「特別の寡婦」の適用条件
「特別の寡婦」は、寡婦より条件は厳しくなりますが、その分、控除額も大きくなります。
とはいえ、それほど厳しい条件ではありませんので、割と多くの方がこちらに当てはまります。
特別の寡婦に該当する人は、女性で以下の3つの条件全て満たす人で、35万円の所得控除を受けられます。
かつ、
年間所得38万円(給与で103万円)以下の子供を扶養している(子供の年齢は問わない)。
かつ、
自分は年間所得が500万円以下(給与のみ場合、年収6,888,889円以下)である。
こちらは子供の扶養が必須で、親兄弟だけを扶養している場合は適用できません。
お子さんがバイトをしていて、所得が38万円(年収103万円)を超えている場合はNGです。
特別の寡婦に該当する人は、当然「寡婦」にも該当しますが、年末調整で申告する時は、優遇の大きい「特別の寡婦」で申告しましょう。
「寡夫」の適用条件
読みは「かふ」ですが、文字が「夫」になっている寡夫で、男性限定です。
寡夫に該当する人は、男性で以下の3つの条件全て満たす人で、27万円の所得控除を受けられます。
かつ、
生計を1つにする子供がいる(年齢は問わない)。
かつ、
自分は年間所得が500万円以下(給与のみ場合、年収6,888,889円以下)である。
こちらは、子供の扶養が必須で、親兄弟だけを扶養していても寡夫に該当しません。
お子さんがバイトをしていて、所得が38万円(年収103万円)を超えている場合はNGです。
母子家庭 寡婦控除の扶養控除等申告書への書き方
寡婦控除を申告する時の書類は、「本年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を使います。
それでは、書き方を詳しく見ていきましょう。
まずは本人情報欄
用紙の一番上は、ご自身の情報を記入します。
②マイナンバー
ご自身のマイナンバーを記入しますが、会社によっては「書かないで良い!」と指示する場合がありますので、記入する際は、あらかじめ会社に確認してください。
③世帯主の氏名
ここに記入する世帯主とは、住民票に記載されている世帯主のことを指しています。
実家暮らしで、実家の住民票の世帯主がお父さんならお父さんの氏名を書きます。
世帯主に誰を記入しても、年末調整の還付金額等に一切影響はありませんので、ありのままを書いてください。
④あなたとの続柄
③で記入した世帯主から見てあなたはどういう相手かということを基準に考えます。
世帯主が自分なら「本人」と書きます。
寡婦控除を意思表示する欄
用紙の中段、C欄で寡婦、特別の寡婦であることを申告します。
該当するところ(寡婦、特別の寡婦、寡夫)にレ点チェックを入れて、その右側の「左記の内容」という空欄には、
- 1人になった原因(死別なのか離婚なのか⽣死不明なのか)
- 扶養親族や⽣計を1つにする⼦がいればその⽒名と、その⼈の本年中の所得⾒積額
- 本人所得500万円以下の条件が必要だった場合は、あなたの本年中の所得⾒積額
このような内容を記載します。
子供の情報を記入する
子供がいる場合は子供の情報も記入しますが、年齢に応じて記入する場所が異なりますので気をつけましょう。
12月31日時点で16歳以上なら緑枠で囲ったB欄「控除対象扶養親族(16歳以上)」に氏名等を記入します。
親兄弟を扶養している場合も(16歳以上なので)こちらの緑枠内に記入します。
12月31日時点で15歳以下なら青枠で囲った「16歳未満の扶養親族」に氏名等を記入します。
さらに詳しい書き方は別の記事でまとめていますので参考にしてください。
https://kaiteki-blog.com/4161.html
母子家庭で子供扶養だと、寡婦控除と扶養控除ダブル適用
シングルマザーが16歳以上の子供を扶養している場合は、子供は「控除対象扶養親族」にも該当しますので、
・C欄 特別の寡婦(または寡婦)にレ点チェック→寡婦控除適用
・B欄 控除対象扶養親族に子供の氏名記入→扶養控除適用
の両方を適用することができますので、忘れずに記入しましょう!
【記入例】夫と離婚し、17歳と8歳の子供2人を扶養していて、年収350万円の人
まず、赤枠の【Ⅱ】の欄の「特別の寡婦」にレ点チェックをした後、右横の「左記の内容」欄に以下の内容を記載します。
- 離婚又は死別の記載
- 自分の今年の所得見積額(分からない時は年収でも良い)
- 子供の名前と続柄
- 子供の所得見積額
次に、17歳の子の分を緑枠の【Ⅰ】欄に記入します。
バイトの年収が103万円未満なので、所得見積額は0円。
住所はお母さんと同居なので、「同上」でもOKです。
最後に、8歳の子は青枠の【Ⅲ】欄に記入します。
書き方は17歳の子とほとんど一緒ですね。
寡婦控除でよく出てくる「所得の見積額」って何?どうやって計算する?
寡婦や寡婦控除の適用条件や、子供の情報を書く時などに「本年中の所得の見積額」という言葉がよく出てきます。
これがいっつも良く分からないのですが、何でしょうか?
年末調整の世界では「収入」と「所得」をキッチリ区別しています。
「収入(年収)」-「経費や給与所得控除」=「所得」
「所得の見積額」とは、今年の収入から経費等を差し引いた金額(=所得)を予想でいいから書いてください、ということです。
年末調整の用紙には「所得」を書くのが基本です。
でも、記入時点では確定数字は書けませんので、予測のアバウトな数字で構いません。
会社員・パート・アルバイトなどの給与収入だけの人は、「給与所得控除」という経費が一律認められていて、残りの金額が「所得」になります。
この「給与所得控除」の額は収入の額によって違ってくるのですが、給与年収1,618,999円までは一律に65万円です。
給与年収 | 給与所得控除 | 所得 |
---|---|---|
50万円 | 65万円 | 0円 |
80万円 | 65万円 | 15万円 |
100万円 | 65万円 | 35万円 |
150万円 | 65万円 | 85万円 |
給与年収が65万円未満だと、所得がマイナスになってしまいますが、その場合は「0」と書いておきましょう。
※給与年収が161万円以上の場合はこの下の表から所得額(C)を算出してください。
【年収から給与所得控除額を差し引いた「給与所得額」算出の計算表】
給与年収(A) | 給与所得金額(C) |
---|---|
1円~650,999円 | 0円 |
651,000円~ 1,618,999円 | (A)-650,000円 |
1,619,000円~ 1,619,999円 | 969,000円 |
1,620,000円~ 1,621,999円 | 970,000円 |
1,622,000円~ 1,623,999円 | 972,000円 |
1,624,000円~ 1,627,999円 | 974,000円 |
1,628,000円~ 1,799,999円 | (A)÷4(千円未満切捨)=(B) (B)×2.4=(C) |
1,800,000円~ 3,599,999円 | (A)÷4(千円未満切捨)=(B) (B)×2.8-18万円=(C) |
3,600,000円~ 6,599,999円 | (A)÷4(千円未満切捨)=(B) (B)×3.2-54万円=(C) |
6,600,000円~ 9,999,999円 | (A)×90%-120万円=(C) |
10,000,000円~ 12,200,000円 | (A)-220万円=(C) |
子供がバイト いくらまでならお得?
お子さんが高校生以上になると、一生懸命バイトをしてくれるご家庭も多いかと思います。
そうなると心配になってくるのが、
「子供が扶養から外れるのでは?」
「寡婦控除を使えなくなるのでは?」
ということ。
損得の分岐点となる、お子さんの年収はいくらなのでしょうか?
まず、寡婦控除が受けられる、お子さんの年収上限は103万円です。
(年収は給与支給日1/1~12/31の合計で考えます。)
103万円を超えると、寡婦控除だけでなく、扶養親族控除(38万円)や特定扶養親族控除(お子さんが19歳以上23歳未満の場合で63万円)も使えなくなります。
お子さんが年収103万円を超えて、扶養でなくなった場合、お母さんの税金(所得税と住民税)は、所得にもよりますが、最低でも10万円は増えます。
ですので、お子さんのアルバイト収入は、年間103万円までに抑えるか、お母さんの増税分10万円を見越して、113万円以上稼ぐか、どちらかがお得です。
でも、アルバイトで113万円以上稼ぐのは、学業との両立が困難になるケースもあるので、経済的に可能であれば、103万円以下に抑える方向が望ましいのではないでしょうか?
年末調整で未婚の母子家庭は寡婦控除できる?
今まで見てきたように、「寡婦」や「特別の寡婦」には、その条件に「夫と~」という「結婚」が前提になっています。
したがって、未婚だったり、事実婚の場合は、残念ながら寡婦控除を適用できません。
寡婦だと住民税も優遇
住民税(お住まいの市町村から課税)も、寡婦(または特別の寡婦、寡夫)だと、非課税に該当する年収枠が大きくなります。
例えば、年末調整で寡婦と申告しなかった場合(お子さん一人)だと、年収1,469,000円以上だと住民税が発生しますが、寡婦だと無条件で(お子さん何人でも)年収2,044,000円以上から課税になります。
市町村は基本的に(あなたの申告に基づいて作られた)年末調整=源泉徴収票を会社からもらい、そこに書いてある内容で住民税を計算・課税します。
ですので、会社の段階で「私、寡婦です!」と申告しておかないと、市町村も「この人寡婦じゃないんだ~」と処理してしまいます。
「私、どうせ所得税非課税だから」とか言わずに、パートでも派遣社員でも、寡婦に該当するなら絶対に申告しましょう。少なくとも損はありませんよ。
母子家庭の扶養控除 寡婦控除 まとめ
例えば、年収300万円のお母さんが子供を扶養しているとすると、特別の寡婦の適用で、所得税と住民税合計で5万円弱減額になります。
申告書に〇するだけで5万円ですよ。
寡婦控除は適用条件がややこしいので面倒臭くなってしまうのですが、一度しっかり確認しておけば、来年からはそれほど考えることなく申告できるはず。
面倒でも条件を確認し、当てはまるなら忘れないように確実に申告しておきたいですね。
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